4.3_03 柿と白銅鏡

ナマイ村のヒエンは、胸を撫で下ろしているようだ。

ヒエン「ふぅ……。
一時はどうなることかと思ったが、なんとかなったな。
ツユの様子からすると、記憶が戻ったわけでもなさそうだ。」

ユウギリ「どうやら彼女は、柿が欲しくてナマイ村まできたようです。
恐らく、ゴウセツに渡す物かと……。」

ヒエン「柿ひとつに随分と振り回されたものだな……。
まあよい、ゴウセツも喜ぶことだろう。
さて、思わぬ遠回りとなったが、目的の「カストルム・フルーミニス」に向かうとするか。
アルフィノたちも、そちらで捜索しているはずだ。」

カストルム・フルーミニス付近のヒエンと話す

ユウギリ「先ほど、帝国の飛空艇が到着したそうだ。
あれに、ドマの徴用兵たちが乗っているのだろうか……。」

アリゼー「ヨツユは記憶が戻ったわけじゃなかったのね。
そういえば、ゴウセツが柿を食べたいとか話してたわ。」

ヨツユ「ねぇ……まだ、帰らないの……?
おじいちゃんに、早く……柿、渡したい……。」

アルフィノ「話は聞いているよ。
ヨツユがナマイ村へ行くなんて、それは大騒ぎだったろう。
ともかく、見つかってよかった。」

ヒエン「すでに、帝国の連中は着いているようだ。
さて、厄介な大使殿との再会だな……。」


カットシーン開始

アサヒ「またお会いできて、嬉しく思います。
ヒエン様……それに、ヨツユ姉さん。」

ヒエン「出迎えが遅くなって、すまない。
大使殿も壮健なようでなによりだ。
徴用兵達は飛空艇に?」

アサヒ「もちろんです。
ドマ側の準備も順調なようですね。
今日、彼女を連れてきたのも、その一環とお見受けしますが?」

ヒエン「ああ、捕虜交換に先立ち、様子を見てもらおうと思ってな。
すこぶる健康だが、記憶の方は相変わらずよ。

アサヒ「……そのようですね。
が、今日は姉に会わせたい人がいるのです。」

アサヒの父「ヨ、ヨツユ……
元気そうじゃないか、安心したよ……。」

(ヨツユが怯え、頭を抱える。脳裏を幼い頃の記憶が過る。養母の陰から笑ってみているだけの弟アサヒ。)

ヒエン「まさか、あの者らは……!」

アサヒ「どうしたんです、姉さん……
私たち姉弟の大切な両親ですよ?
よくよく躾けてもらったこと……忘れてしまったんですか?」

(父親に怒鳴られ怯えている記憶が脳裏を過る。やはり養父の陰から冷ややかに見ているだけの弟アサヒ。)

ヨツユ「柿……おじいちゃんに、渡さなきゃ……。」

アサヒ「う~ん、最後のあがきだったんですが……
過去を思い出してはくれなかったみたいですねぇ……。
そんなに怖い顔をしないでください。
いいですよ、そちらの女性はドマ人であると認めましょう。
どうか姉のこと、よろしくお願いしますね。
でも、姉さん。
私は戻ってきてくれると、信じていますよ……。」

ヒエン「では、捕虜交換は予定どおりに……。」

アサヒ「ええ、川向こうの施設がまだ使えるようですから、そこにドマ出身の徴用兵たちを降ろします。
捕虜たちもそこに……。」

ヒエン「あいわかった、送り届けよう。」

カットシーンここまで


ヒエン「アサヒめ、よりによってヨツユの両親を連れてくるとは、姑息な手を使いおって……。
やはり油断ならぬ男のようだな。
ともあれ、これでヨツユの件はひとず落着となった。
ユウギリに送らせたが、彼女もこれで安心して、ゴウセツに柿を食わせることができるだろう。
さあ、わしらも帰燕館へ戻るぞ。」

アリゼー「どうしたの、アルフィノ?」

アルフィノ「いや、ちょっと気になることがあってね……。
また後で話すよ。」

アルフィノ「これで、捕虜交換にヨツユを連れて行く必要はなくなったね。
このまま、何事もなく済めばいいんだが……。」

アリゼー「ヨツユ……いえ、ツユはこれからドマで暮らすことになるのね。
いまのところ館の中で隠されているけど、いつかは街の人々の前に出ることになるのかしら……。」

帰燕館のヒエンと話す

ヒエン「さて、ゴウセツに報告して安心させてやるとするか。
もっとも、ツユが先に戻っているので、承知のこととは思うがな。」


カットシーン開始

ヒエン「ゴウセツ、入るぞ。」

ゴウセツ「若……ささ、どうぞ中へ……。」

ゴウセツ「泣きはらした様子で、ツユが帰ってきましてな。
拙者に柿をひとつ剥いてくれたのでござるが、その間、なにひとつ話そうとはしませなんだ……。
今は疲れたので寝ると別室に……
いったい何があったのでござるか?」

ヒエン「ヨツユの記憶を蘇らせようと、大使殿が策を弄したのだ。
連れてきた両親と引き合わせてな……。
頭を抱えて苦しんでおった。
結局、それでも過去を思い出しはしなかったようだが……。」

アリゼー「ヨツユって、養父母から冷たい仕打ちを受けていたんでしょう?
心の傷をえぐるようなことをして……
アサヒの本性見たり、といったところね。」

ゴウセツ「ふぅ……それで得心がいったでござる。」

ヒエン「ともあれ、ヨツユをドマの民として扱うことには同意した。
後は、予定どおりに捕虜を交換し、徴用兵らを取り戻すことができれば、ひと安心よ。」

アルフィノ「ところで、その捕虜交換ですが、ひとつ気になることがあります。
先ほど、カストルム・フルーミニスでアサヒと対面した折に、怪しげなコンテナを見かけました。
ほどなく、帝国軍に回収されたようですが……。」

アリゼー「確かに、いくつかのコンテナがあったわね。
爆弾やら魔導兵器やらが隠してあるとでも言いたいの?」

ヒエン「ふむ、わしの命を狙っておるなら、これまで、いくらでも機会はあったはず……。
そのような単純な策とも思えんが……警戒はしておこう。」

世話役の女中「……失礼致します!
ツユが……ヨツユが姿を消しました!」

ゴウセツ「なんと……!?」

世話役の女中「申し訳ございません。
床に入るのを確認したので油断しておりました……。」

ヒエン「詫びはいい。
牢に入れず座敷を与えたのは、わしだ。
館の外に出ている可能性もある。
手分けをして、捜すしかあるまい。
すまぬが手を借りても?」

????「う、うぅ……。」

アサヒの父「た、助け……て……。」

(過去視)

ヨツユ「思い出さねば、生きられた……。
恨まれるだけでも、生きられた……。
でも、引き金引いた男に優しくされちゃあ、もう生きてやいられない……。」

アサヒの父「だ、誰だ!?」

アサヒの母「ハッ……ヨツユじゃないか。
驚かすんじゃないよ!」

アサヒの父「ここは町人地か……?
いきなり軍に連行されて、ドマで生きろと放り出されたんだが、まさか、お前に会うとは……。」

アサヒの母「まったく、アンタは本当に疫病神だよ!
忌々しいったら、ありゃしない!
せっかくのお役目を果たせなかったばかりか、アンタが、おめおめと生き恥をさらしてくれたおかげで……!
アタシらは、帝都での優雅な暮らしを奪われて、こんな泥だらけの廃墟に連れてこられて……!
いったい、どうしろっていうんだい!」

アサヒの父「よさないか……。
その娘は、もう何も覚えてはいないのだから。
それにこうなった以上、今後の暮らしを考えてゆかねば……。
……ふむ、それにしても器量の良さだけは、相変わらずだな。
今でも妓楼に売れば、いくばくかの金にはなるだろう。
それを元手に、クガネにでも渡って商売を始めれば……。」

ヨツユ「……養い親は、この有様。
陳腐な茶番から目覚めてみれば、相も変わらずこの世は地獄か。
そうそう、こうだったよねぇ……。
いいよぅ。
こんなあたしに、世がまだ悪と咲けという。
なら、幕引きまで、期待に応えてやろうじゃないか……。
堕ちて……堕ちて……
何もかもが妬ましく、身は黒く腐り果てている。
はびこる正義はこぞって偽善、悪性だけがあたしの理屈さ……。
あたしをそういうものに貶めて、あたしがそういう女だと教えてくれたのは、ととさまと、かかさまでしょう?
ああ……。
とことん惨めになりさがって、やっとお鉢がまわってきた。
あたしの家族、あたしのドマ……
あたしの……仇敵!」

アサヒの父「ヨ……ヨツユ……!?
ぐはっ……な、なにを…………」

アサヒ「おかえりなさい、姉さん。
戻ってきてくれると信じていましたよ。」

ヨツユ「…………やっぱり、かい。
どうせ、お前さんの差し金だろうとは思っていたよ。
血の繋がった親を使うなんて、相変わらずのゲスっぷりだね。」

アサヒ「育ての親を刺しておいて、よく言いますね。
でも、一刺しで引導を渡すなんて、非力な姉さんにしては、上出来だと思いますよ。
ただ……それじゃあ、倒せるのは哀れな年寄りだけだ。
どうです……もっと「力」が欲しいと思いませんか?」

(過去視ここまで)

アサヒの父「死にたく……な……い……。」

ヒエン「どうした、見つかったか?
……彼らはナエウリ家の!?
記憶を取り戻したヨツユが両親を殺害……
アサヒとともに去った、と……。
自らの親を犠牲にしてまで、ヨツユを手にするか……。
何を企む……アサヒ…………。
何にせよ、ここでわしらが憶測するようなものではないか。
一度、館に戻ろう。
皆を集めて、状況を整理しなければな……。」

カットシーンここまで


ユウギリ「不覚にも、ヨツユが記憶を取り戻したことに気づけなかった。
やはり、両親と対面したときか……?
ならばなぜ……いや、これ以上の推測は無駄というものか。」

アリゼー「結局、アサヒの思惑通り、ヨツユは記憶を取り戻したのね。
そのうえ、実の両親を差し向けて殺めさせるなんて……
とんでもない奴だわッ!」

アルフィノ「ヒエン殿から何があったのか聞いたよ。
ヨツユは帝国に戻ってしまったようだね。
いったい、アサヒは何を企んでいるというんだ……?」

ヒエンと話す(クエスト終了)

ヒエン「両親の遺体は、収容してある。
折を見て、荼毘にふすつもりだ。
ふたりにとっては、因果な里帰りとなったものよ。
この件、ゴウセツにはわしから伝えておいた。
あやつは一言返事をすると、首を垂れて黙ってしまった。
しばらく、そっちしておいてやってくれ……。」

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